『恋しくて』村上春樹

村上春樹の書く文章が好きです。瑞々しくて。
彼の文体を毛嫌いしたりネットのオモチャにする人は多いけれど、繊細な言葉選びと比喩表現にかけては彼の右に出る作家はなかなかいないんじゃないかと思う。

 

初めて村上春樹を読んだのは小6か中1くらいの頃で、自宅にあった『ノルウェイの森』でした。

何気なしに手に取ってみたものの、何が面白いのかわからず上巻の途中で頓挫。
次に触れたのは大学一年の春で、これまた何気なしに村上春樹を扱う講義を履修したところ この講義が殊の外面白く、それからしばらくは村上春樹ばかり読みました。
勿論『ノルウェイの森』も。

 

でも正直なところ、未だに彼自身の書く小説の面白さはいまいちわからないんです。
私の頭が悪いために理解出来ていないだけかも知れないけど。
彼の作品に共通する陰湿でヘヴィーな世界観と単調なストーリーが少し苦手なのかもしれない。

なので とりわけ好んで読むのは彼が翻訳した洋書で、翻訳は元の作家の世界観ありきなところがありがたい。
翻訳こそが彼の文章力とワードセンスを存分に発揮できる分野であるような気もします。

 

新年一冊目の本。

丁度元旦から読み始めました。

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES (中公文庫)
 

 村上春樹が選んだ海外作品と自身の書き下ろしを収録した10扁のアンソロジー。

 

特に気に入ったのは一作目の「愛し合う二人に代わって」。

原題はごくあっさりと「The Proxy Marrige (代理人結婚)」らしい。

それを「愛し合う二人に代わって」って。いいね。

内気で、インテリジェントで、あまりパッとしない容姿の主人公と、美人で、生意気で、自分の手をフラっとすり抜けていくような掴みどころのないヒロイン。

たまらない。昔から、振り回す女、振り回される男、という構図の物語が好きです。愛しくてたまらなくなる。

 

村上春樹の柔らかな文体で訳されたラブストーリーはどれも読んでいて心地良い。

彼と作風の似ている作家が集まっているのか 全体的にどことなく仄暗い印象も受けるけれど、どっぷりとつからずに適度な距離感を保ったまま読み終えることができるのは短編集の良いところだと思います。

ひとつだけいちゃもんをつけるなら、各短編の終わりに【甘味★★★★ 苦味★ 】といった具合に付けられている恋愛甘苦度なるバロメーター表記が若干ダサイ。

 

10組のカップルがいれば10通りの物語がある。

世界中どこを探してもひとつとして同じラブストーリーは存在しないんです。

恋愛って面白いですね。

恋人に贈って どの話が好きか尋ねたい一冊。